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「1+2+3+・・・・ = -1/12な部屋」の紹介


1+2+3+・・・・ = -1/12な部屋

数学コラムはどれも面白いが、特にガロア理論と、5次元方程式の解法の不可能性のお話が良かった。

内容もさることながら次の文章に勇気づけられたと言う意味で。

(数学と言うのは講義で教えられても本で読んでもこのレベルになると一回目ではまず理解できません。(少なくとも私程度の頭では・・・)

 みんな意味はさっぱりわからなくても講師の言った事を機械的にノートに書き写して、

 意味はわからなくても公式を活用して変形して問題を解いて(←何をしているのか本人も実はわかってない)、

 それから頭の中で熟成が進んで?数週間~数ヶ月~数年遅れてから直感による理解が追いついてくるものです。^^;;;)

http://samidare.halfmoon.jp/mathematics/GaloisTheory/index.html

その他、コラムとしてはまとまっていないものの、巨大数の話が大変面白い。

私は2019年の大晦日にこのサイトと出会ったのだが、その大晦日はもはや紅白歌合戦そっちのけで巨大数の記事を読み耽ってしまった。巨大数と共に過ごしたようなような年越しだった。

ブログの日付を追って行ってもいいのだが、少し大変なのでURLを列挙しておこう。

数学界で近年見つかった、TREE(3)と言うウルトラ巨大な数についてのお話 1 序章

数学界で近年見つかった、TREE(3)と言うウルトラ巨大な数についてのお話 2 TREE(1),TREE(2)

数学界で近年見つかった、TREE(3)と言うウルトラ巨大な数についてのお話 3 TREE(3)

数学界で近年見つかった、TREE(3)と言うウルトラ巨大な数についてのお話 4 ランク表

数学界で近年見つかった、TREE(3)と言うウルトラ巨大な数についてのお話 5 グラハム数の一つ上のランクを作る その1

数学界で近年見つかった、TREE(3)と言うウルトラ巨大な数についてのお話 6 グラハム数の一つ上のランクを作る その2

数学界で近年見つかった、TREE(3)と言うウルトラ巨大な数についてのお話7 ランク10~16まで

数学界で近年見つかった、TREE(3)と言うウルトラ巨大な数についてのお話8 ランク16~17の世界

数学界で近年見つかった、TREE(3)と言うウルトラ巨大な数についてのお話9 ランク18の世界

数学界で近年見つかった、TREE(3)と言うウルトラ巨大な数についてのお話10 天秤システム

新年数学コラム 数学界で近年見つかった、TREE(3)と言うウルトラ巨大な数についてのお話 11 Loader数

数学コラム 巨大有限数のお話12 最強のBX関数 (1)

数学コラム 巨大有限数のお話13 最強のBX関数 (2)

数学コラム 巨大有限数のお話14 Cantor Atticの塔 (1)

数学コラム 巨大有限数のお話14 Cantor Atticの塔 (2)

数学コラム 巨大有限数のお話(16) Rayo数

数学コラム 巨大有限数のお話(17) Rayo数の弱い拡張 

数学コラム 巨大有限数のお話(18) Rayo数の強い拡張 ふぃっしゅ数

数学コラム 巨大有限数のお話(19) 巨大有限数の強さランキング

数学コラム 巨大有限数のお話(20) Uncomputableカテゴリの意味

これらのコラムを読んで巨大数に興味を持ったなら、界隈での有名人「フィッシュ」氏著の「巨大数論」がおすすめだ。

入門者におすすめの巨大数の例として、「ベントレー数」というものがある。巨大数の有名な例はグラハム数だが、この数字の出どころは専門的な数学の論文であり、題材として少しとっつきづらい。ベントレー数はこの名前の元となった短編小説「Forever Endeavor」があり、その恐るべき巨大さのイメージが非常に湧きやすいのだ。

永遠の努力

上記のサイトはダイジェスト版だが、短編小説全体を読むと主人公の心理描写や細かい設定が丁寧に描写されていて面白い。和訳は存在しないようなのだが、機械翻訳でも割と読める。Google Chromeで開くとページ全体を翻訳するのが楽である。

Forever Endeavor

以降はForever Endeavorの感想(ネタバレあり)。


Forever Endeavorの終盤、絶望的な状況が明らかになった主人公ベントレー(Bentley)は、当初完璧と思われたシステムの綻びらしきものを見つける。バスルームに開けた穴から「エコーズの廊下」と彼が名付けた廊下に出ることができ、その先でシステムの仕組みの一端らしきものを確認する。さらにはその先でプールを見つけ、気分転換のために遊ぶということができるようになる。その上、絶対の存在に思われた監視者コンパドレ(Compadre)が謎の放電現象やハエを異常に恐れるなど、奇妙な行動を始めるようになる。

結局ラストは、そのような数々の綻びの発見も虚しく、コンパドレによりバスルームの穴も塞がれ、再び地獄のような日々が続くと言うオチである。

正直なところ、私は最初は終盤の描写は蛇足ではないかと思った。ベントレーが「10本のカウンター」が何を意味するかを知り、苦役のあまりに絶望的な長さに気を失ったあたりで幕切れとした方が、すっきりとしている。完璧なシステムの中で続く永遠の苦役である。(もちろん実際には巨大なだけで永遠ではないのだが、あまりに巨大なため永遠という表現しか出てこないあたりで人間の想像力の限界を突きつけられるのだ。)

しかし、それではあまりにも救いがないと考えた作者の温情が、終盤のギミックではないだろうか?ベントレーは約600年の歳月を苦役に費やしたあたりで、これらの綻びと出会った。理論上は、彼が本当に10本のカウンターを完成させるためには、永遠としか表現できないほどの長い苦役に耐える必要がある。しかし、果たしてそうだろうか?たかだか600年で綻びを見せるシステムが、それだけの歳月稼働し続けることが可能だろうか?4本目のカウンターを完成させる前に、システムの崩壊が訪れると考える方が自然ではないだろうか?

システムの綻びがベントレーをぬか喜びさせるだけのものであると解釈することも可能である。しかし、そのようなことを行うメリットが作中に存在しないのである。読者をぬか喜びさせるというメタ的な視点の可能性もあるが、作品としての完成度を下げてまで行うようなものにも思えない。

ということで、ベントレー氏はおそらく今後、長く見積もっても1万年のうちには苦役から解放されるのではというのが私の見立てである。頑張れ、ベントレー!あと9400年だ!